
ビニールハウスに最適な温度管理とは?3つの指標と夏・冬場の対策を解説
近年の猛暑や寒波を背景に、ビニールハウス内の温度管理の重要性が高まっています。
「なんとなくの経験」や「見回りの勘」を頼りにしていては、作物の生育不良や暖房コストの肥大化を招くリスクがあります。
ビニールハウス栽培で安定した高収益を上げるためには、作物の生理生態に合わせた3つの温度指標を正しく理解し、夏・冬それぞれの特性に応じた的確な対策を講じることが重要です。
さらに、労働力不足が深刻化する現代の農業経営においては、これらをいかに「自動化・データ化」し、省力化を進めるかが成功の鍵を握ります。
本記事では、ビニールハウスの温度管理における基本指標から、夏・冬の具体的な環境対策、などを解説します。
目次
ビニールハウスにおける温度管理の重要性
ビニールハウスは、露地栽培のように風が吹くことがないため、空気がこもりやすく、強い日差しによって室温が上がりがちです。
作物にとって最適な温度を上回った状態が続くと、開花の遅れや果実の傷み、最悪の場合は作物が枯死することもあります。
また、ビニールハウス内は湿気もこもりやすいため、夏場はサウナ状態となり、作業者にとっても脱水や熱中症のリスクが生じます。
湿度が上がることで、病害虫も繁殖しやすくなります。
これを避けるためには、遮光資材や冷却装置などを活用して室温を保つ必要があります。
一方、冬場は逆に室温が下がり過ぎてしまい、葉が萎れたり、生育が遅くなったり、色づき不良が起きたりします。
これを避けるためには、加温器や暖房機などを活用して室温を保つ必要があります。
ビニールハウスにおける温度管理の指標
ビニールハウス栽培で押さえておきたい基本的な情報は、次の3つです。
ビニールハウス内の気温
温度管理において最も基本となる指標がハウス内温度です。
単に「今の温度」だけを見るのではなく、温度がどのように推移しているかを把握することが重要です。
特に、日平均気温、最高気温とその時刻、最低気温とその時刻を確認することで、作物への負担や設備運用の課題を見つけやすくなります。
日平均気温…1日の温度環境を大まかに把握するための基本指標。日平均気温が適正範囲から外れる状態が続くと、生育の遅れや品質低下につながる可能性があります。
最高気温とその時刻…、高温障害のリスクを把握する上で重要。「いつ、どの程度暑くなったのか」を具体的に把握できます。
最低気温とその時刻…冬場の低温障害や凍害リスクを判断するうえで欠かせません。最低気温だけでなく、その時刻を確認することで、暖房開始のタイミングや保温カーテンの閉める時間を適切に調整できます。
ビニールハウスの外気温
外気温は、ハウス内温度を予測する上で欠かせない指標です。
ビニールハウスは外部環境から完全に切り離された空間ではないため、外気温の影響を大きく受けます。
特に冬場は、夕方以降の気温低下や寒波、放射冷却によって暖房負荷が大きく変わります。
外気温を把握しておけば、暖房の開始タイミングや保温カーテンの運用、凍害リスクの事前判断に役立ちます。
夏場も、外気温とハウス内温度の差を見ることで、換気が十分に機能しているかを確認しやすくなります。
ビニールハウスの日射量
日射量は、ハウス内温度を大きく左右する重要な要素です。
晴天時は太陽光によってハウス内温度が急上昇します。冬場でも日射量が多ければ、外気温が低くてもハウス内が高温になることがあります。
一方、曇天や雨天、降雪時は日射量が不足し、暖房を使用しても十分な昇温が難しい場合があります。
植物は日中に日射を浴びて「光合成(栄養を作る活動)」を行い、夜間や日陰では「呼吸(栄養を消費する活動)」をしています。
もし曇天などで日射量が少ない(光合成が十分にできない)状態でハウス内の温度だけが高くなってしまうと、植物の呼吸量が光合成量を上回ってしまいます。
これにより、作物は蓄えたエネルギーを無駄に消耗し、果実の肥大不良や株の衰弱(生殖成長と栄養成長のバランス崩壊)を引き起こし、最終的な収量・品質の大幅な低下を招きます。
ビニールハウスの温度管理対策:夏場の高温対策
近年の日本の夏は猛暑化しており、ハウス内の高温対策は死活問題です。
夏場は「いかに熱を逃がし、直射日光を遮るか」がポイントになります。
窓・扉の開閉による換気
天窓や妻面(ハウスの両端)を大きく開け、内部に溜まった熱気と湿気を外へ逃がします。
自動換気扇や環境制御システムを導入し、設定温度に応じて自動開閉させることで、効率よく換気が行えます。
遮光カーテン・遮光ネットの展張
ハウスの外側や内側に遮光資材を張ることで、強すぎる日射を遮り、内部の温度上昇を物理的に抑制します。
遮光率は作物や生育段階に合わせて選ぶ必要があります。
近年では、熱線(赤外線)だけを効率よくカットし、光合成に必要な光は通す遮熱性の高い高機能被覆資材も登場しており、収量維持と温度抑制のバランスを取る経営判断が求められます。
ミストシステム(細霧冷房)の活用
ハウス内に微細な霧を噴霧し、その霧が蒸発する際に周囲の熱を奪う「気化熱」を利用して室温を2~5℃ほど下げられます。
ミストシステムは急速な冷却に効果的ですが、ハウス内の湿度が高くなりすぎると病害虫の発生リスクが高まるため注意が必要です。
日中の高温・乾燥時間帯に絞って稼働させるなど、後述する「データロガー」等を用いて「温度と湿度のバランス」をモニタリングしながら運用することが重要です。
循環扇(ファン)の活用
ビニールハウス内は、構造上どうしても空気の「淀み」や局所的な「高温スポット(温度ムラ)」が発生しがちです。循環扇(ファン)を設置してハウス内の空気を強制的に対流させることで、この温度ムラを解消します。
単独での冷却効果は限定的ですが、上記の「換気」や「ミストシステム」と組み合わせることで、それぞれの対策の効果をハウス全体に一均に広げる役割を果たします。
空気を循環させることには、作物の葉の周りの飽差(空気の乾燥具合)を適正に保ち、光合成や蒸散作用を促す効果もあります。
ビニールハウスの温度管理対策:冬場の寒さ対策
冬場は一転して、作物の凍害を防ぎ、生育を止めないための「いかに熱を蓄え、逃がさないか」という保温と加温の技術が求められます。
多重カーテン(内張り)の設置
ハウス外部のビニールに加え、内部にもう1~2層のビニールや保温性・遮熱性の高いカーテンを重ねる対策です。
これによりハウス内に強固な「空気の層(断熱層)」が形成され、夜間にハウス内の熱が外へ逃げるのを防ぎます。
コストを抑えて高い保温効果を得られるため、冬場の防寒対策の基盤となります。
日射量のある日中はカーテンを開けて太陽光の熱をハウス内に蓄え、夕方以降は速やかに閉めて熱を閉じ込めるという、日照サイクルに連動した開閉管理がポイントとなります。
ハウス加温機(暖房機・ヒートポンプ)の活用
設定温度を下回った際に自動で稼働する暖房機を導入します。
ただ暖めるだけでなく、温風ダクトを適切に配置してハウス全体を均一に暖める工夫が必要です。
温風ダクトを適切に配置し、温度ムラなくハウスの端や足元まで均一に暖かい空気が行き渡るように設計することがポイントとなります。
マルチングと地中加温
気温だけを暖房で上げても、地温が下がると根の動きが鈍くなり、生育不良を起こしてしまいます。
そこで、土壌を黒や緑のビニール(マルチシート)で覆うことで、太陽光の熱を土に蓄えます。
厳冬期や寒冷地では、土の中に電熱線を埋め込んで直接根元を温める「地中加温」も有効です。
株元をピンポイントで温めることで、ハウス全体の空間を暖めるよりもエネルギー消費を抑えられ、低コストで確実な生育促進が期待できます。
ビニールハウスの温度管理におすすめのデータロガー
ここまで紹介した夏・冬の対策を効果的に行うためには、ハウス内の温度や湿度が「今、どうなっているか」「過去にどう推移したか」を正確に記録・分析することが欠かせません。
そこで、手軽にスマート農業・データ農業をスタートできるツールとしておすすめなのが、「WATCH LOGGER(ウォッチロガー)」です。
ビニールハウス内は、中央と端、あるいは上下で温度差(温度ムラ)が生じます。
コンパクトで設置しやすいWATCH LOGGERをハウス内の複数箇所に配置することで、どこに熱が溜まり、どこが冷え込んでいるのかを正確にデータ化できます。
数百万円単位の本格的な環境制御システムをいきなり導入するのはハードルが高いものですが、WATCH LOGGERであれば、必要な場所に置くだけで安価にスモールスタートが可能です。
蓄積したデータは、次年度の栽培計画の改善や、スタッフへの技術承継にも役立ちます。
まとめ
ビニールハウスの温度管理では、外気温や日射量といった指標を正しく捉え、夏・冬それぞれの季節に応じた適切な環境制御(換気・遮光・保温・加温)を行うことがポイントとなります。
まずは手軽にハウス内の環境を可視化できる「WATCH LOGGER」を導入し、科学的根拠に基づいた高効率・高収益な農業経営へと踏み出してみてはいかがでしょうか。



