
倉庫の温度管理とは?重要性や保管温度帯の種類、温度管理の方法について解説
品質維持や安全性確保の観点から、医療・化学・食品・物流など多くの業界で倉庫の温度管理は欠かせません。特に近年は、人手不足やコスト増といった課題に直面する企業が増える中で、効率性かつ正確な温度管理体制の構築が求められています。
中小企業では、業務効率化や生産性向上のために設備投資やデジタル化が重視されており、現場管理の高度化が急務となっています。
この記事では、倉庫における温度管理の基本から、保管温度帯の種類、具体的な管理方法、さらに効率化を実現するツールまで、わかりやすく解説いたします。
倉庫の温度管理とは
倉庫の温度管理とは、倉庫内で保管する物品の品質を維持するために、庫内の温度や湿度を一定の範囲内に制御し、監視することをいいます。対象物の特性に合わせて最適な環境を継続的に提供することが求められます。
多くの製造現場や物流拠点において、温度は製品の寿命や安全性に直結する重要な要素です。近年では、地球温暖化に伴う夏季の記録的な猛暑により、従来の自然換気のみを頼りとした倉庫では許容温度を超えてしまうケースがあります。そのため、ハードウェアとしての設備と、ソフトウェアとしての管理体制の両面を強化することが、現代の倉庫運営における標準的な考え方となっています。
倉庫の温度管理の重要性
なぜ、これほどまでに倉庫の温度管理が重視されるのでしょうか?その最大の理由は、預かっている、あるいは製造した「物品の価値」を守ることにあります。
たとえば、医薬品や精密化学製品の場合、わずかな温度変化によって化学反応が進み、有効成分が変質してしまうリスクがあります。また、食品であれば微生物の繁殖による腐敗や、油脂の酸化による風味の劣化を招きます。こうした製品が万が一、市場に出てしまった場合には、健康被害など、企業のブランドイメージ・信頼性を揺るがす重大な事態へと発展しかねません。
さらに、近年では「GDP(医薬品の適正流通)」に代表されるように、輸送・保管プロセス全体での温度記録が令やガイドライン、または取引条件として求められるようになっています。つまり、適切に管理していることを「客観的なデータで証明できること」が、輸送・保管における必須条件となっているのです。
倉庫の保管温度帯の種類と適切な温度
日本の物流業界では、保管する温度域によって、倉庫を以下の4種類に分類することが多いです。
―常温倉庫
常温倉庫とは、原則として特別な温度調節設備を持たない倉庫を指します。JIS規格における「常温」は5~35℃の範囲とされていますが、物流現場では「外気温の影響を受ける環境」と解釈されるのが一般的です。
夏場は屋根からの輻射熱により40℃を超えることもあるため、常温保管であっても遮熱対策や換気による工夫が欠かせません。
―定温倉庫
定温倉庫とは、一年を通じて一定の温度(一般的には10~25℃前後)と湿度を維持するように空調管理された倉庫のことです。外気温の変化に左右されず、結露の発生も抑制できるため、非常にデリケートな製品の保管に適しています。
―冷蔵倉庫
冷蔵倉庫は、保管温度帯によって倉庫業法の「冷蔵倉庫基準保管温度」に基づく区分「C1~C3級」が存在します。
製品が凍結しない程度の低温を維持する必要があるため、庫内の場所による温度のムラをいかに無くすかが管理の鍵となります。
―冷凍倉庫
冷凍倉庫は、‐20℃以下の極低温で保管する施設です。アイスクリームや冷凍食品、あるいは特定の検体や化学薬品などが対象となります。冷蔵倉庫と同様、F1~F4級の区分が存在します。
断熱構造と強力な冷凍設備が必要で、建設コストが高額になります。電力消費量も大きく、運用コストもかかります。また、扉の開閉による外気の流入が激しい結露や着氷の原因となるため、高度な防湿対策と連続的な温度監視が不可欠です。
保管温度帯別に保管できるもの
倉庫で取り扱う物品は、その性質によって最適な保管温度が明確に定められています。ここでは、4つの主要な温度帯ごとに、具体的にどのような物品が保管されるのかを整理してご紹介します。
―常温倉庫
常温倉庫は、原則として空調設備による積極的な温度制御を行わない保管スペースです。外気温の影響を直接、受けるため、季節や天候によって庫内環境が大きく変動するという特徴があります。以下のような製品を保管します。
- 金属部品・機械・工具…錆び対策は必要ですが、極端な温度変化で性質が変わらない工業製品です。
- プラスチック製品・樹脂材料…熱による変形リスクが低い汎用資材などが該当します。
- 紙製品・段ボール・梱包材…湿度の影響は受けやすいものの、温度管理の優先度は比較的、低い物品です。
- 賞味期限の長い加工食品…缶詰、瓶詰、乾物など、常温での長期保存が前提となっている食品です。
- 衣類・繊維製品…防虫・防カビ対策は不可欠ですが、温度変化には強い傾向があります。
―定温倉庫
定温倉庫は、年間を通じて一定の温度(一般的には10℃から25℃前後)と湿度を維持するよう管理された倉庫です。外気温の変化に左右されないため、非常にデリケートな製品の保管に適しています。以下のような製品を保管します。
- 精密機器・電子部品・半導体…熱や静電気、結露による故障を防ぐ必要がある高度な工業製品です。
- ワイン・高級酒類…高温による変質や酸化を防ぎ、熟成を適切に進める必要がある飲料です。
- 種子・球根・苗…発芽抑制や生命力の維持のために、安定した涼しい環境を必要とする農業資材です。
- 特定の化学薬品・接着剤…成分の分離や硬化不良を防ぐため、厳格な温度上限が設定されている工業材料です。
―冷蔵倉庫
冷蔵倉庫は、一般的に‐20℃から10℃までの低温環境を維持する施設です。食品衛生法やJIS規格に基づき、製品が凍結しない程度の温度帯で鮮度を保ちます。以下のような製品を保管します。
- 生鮮食品(野菜・果物・精肉・鮮魚)…呼吸作用を抑制し、腐敗や劣化を遅らせる必要がある食品です。
- 乳製品・卵・練り製品…低温での微生物繁殖抑制が義務付けられているデイリー品です。
- ワクチン・特定の医薬品…タンパク質の変質を防ぐため、シビアな温度管理が求められる医療製品です。
- 生け花・カットフラワー…開花を調整し、観賞期間を延ばすために低温管理される植物です。
―冷凍倉庫
冷凍倉庫は、‐20℃以下の極低温環境を提供する施設です。微生物の活動を完全に停止させ、長期間の保存を可能にします。以下のような製品を保管します。
- 冷凍食品・水産加工品…長期保存を前提とした市販の冷凍製品や加工原料です。
- アイスクリーム・シャーベット…組織の安定性を保ち、食感を維持するために冷凍管理が望まれる製品です。
- 特定のバイオ検体・研究用サンプル…DNAや細胞の構造を維持するために超冷凍保管が必要な研究資材です。
- 一部の化学材料…常温では激しく反応してしまう不安定な化学物質の保管にも利用されます。
倉庫の温度管理を適切に行う方法
倉庫の温度管理によって品質を維持し、さらに管理コストも最適化するための具体的な手法をご紹介します。
―適切な空調設備の導入
まずは、倉庫の広さや構造、保管物の量に合わせた空調設備の確保が第一歩となります。また、空気を循環させるサーキュレーターを併用することで、天井付近と床付近の温度差を解消し、庫内全体の均一化を図ることが重要です。
―温度計やセンサーの設置
庫内の温度状況を正確に把握するためには、温度計やセンサーの設置が重要です。特に、設置場所選びが大切になってきます。たとえば、空調の吹き出し口付近と、風が届きにくい部屋の隅、あるいは製品が密集している棚の奥などでは、数度の温度差が生じることが珍しくありません。そのため、倉庫内の「代表的な1点」だけで計測するのではなく、温度変化が起きやすい場所を含めた複数箇所にセンサーを分散して設置する必要があります。これにより、庫内全体の温度分布を可視化し、リスクの高いエリアを特定できるようになります。
―定期的な温湿度のチェックと記録
温度管理では「測ること」と同じくらい「記録すること」が重要です。これは、万が一、製品の変質が疑われる事態が発生した際、適切な温度で保管されていたことを証明するエビデンス(証拠)が必要になるためです。従来は作業員による手書きの巡回記録が主流でしたが、これには記入漏れや夜間の記録が取れないといった課題がありました。その解決策として現在、多くの現場で導入されているのがデータロガーのような自動計測デバイスです。
―定期的なメンテナンス
空調設備や計測機器を導入したら、その性能を維持するための継続的なメンテナンスが欠かせません。たとえば、空調のフィルターが目詰まりしたり、冷媒ガスが不足したりすれば、設定温度を維持できなくなるだけでなく、電気代の無駄にもつながってしまいます。また、温度計やセンサー自体も経年変化によって精度が狂うことがあるため、記録データの客観的な信頼性を担保するためには、定期的な「校正」を行うことが重要です。
まとめ
倉庫の温度管理は、製品の「命」を守るプロセスともいえます。近年の気候変動や労働環境の変化を考慮すると、人の目に頼った従来の管理方法から、デジタルツールを活用した「自動化・可視化」への移行は避けられない流れといえます。
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