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美術品の安全な運び方とは?輸送時の注意点と対策を紹介

美術品の安全な運び方とは?輸送時の注意点と対策を紹介

美術品の輸送は、その特殊な取り扱いが求められるため、慎重な計画と実行が不可欠です。美術品は通常の物品と異なり、繊細な素材や複雑な構造を持ち、その保存状態が作品の価値や品質に大きく影響します。この記事では、美術品輸送における課題や、輸送時に必要な注意点、そして具体的な対策について詳しく解説します。適切な梱包技術や環境管理、衝撃吸収策を理解し、アート作品を安全に運ぶための知識を深めることで、美術品の保存状態を最善に保ちましょう。

目次

美術品輸送における課題

美術品輸送には様々な問題が存在します。多くの作品が非常に繊細で慎重な取り扱いが必要とされるため、専門的な梱包技術が欠かせません。さらに、作品を適切に保護するためには、温度、湿度、光などの環境条件を厳密に管理する必要があります。高価な美術品を取り扱う場合、盗難や損傷のリスクに対処するためには、十分なセキュリティ対策や、輸送中の事故に備えた適切な保険も肝要です。国際輸送では、複雑な通関手続きが加わり、さらに難しくなります。これらの専門的な要件から、美術品輸送は一般的に高額になりがちです。これらの問題に対処するためには、美術品輸送に関する十分な知識と経験が不可欠です。

美術品輸送の基本知識

―美術品が受けるダメージの種類
美術品が受けるダメージの種類には主に以下のようなものがあります。



1. 物理的ダメージ
衝撃や振動による亀裂、破損、変形などが含まれます。不適切な取り扱いや梱包、輸送中の事故などが原因となることがあります。

2. 環境的ダメージ
急激な温度や湿度の変化、過度な光照射、大気中の汚染物質などによる劣化が挙げられます。これらは材料の変色、歪み、カビの発生などを引き起こす可能性があります。

3 .化学的ダメージ
不適切な保存材料や環境中の化学物質との接触により、作品の材料が化学反応を起こし劣化することがあります。

4. 生物学的ダメージ
虫害やカビなどの微生物による被害です。特に有機材料を使用した作品で問題になりやすいです。

5. 光によるダメージ
紫外線や強い可視光線による物質の退色や劣化は、特に絵画や写真などで顕著です。

6. 経年劣化
時間の経過とともに自然に起こる材料の劣化です。他のダメージ要因と複合して進行することが多いです。

これらのダメージは単独で発生することもありますが、しばしば複合的に作用し、作品の価値や保存状態に重大な影響を与えます。

適切な梱包材料と技術

―絵画、彫刻、陶芸品などの梱包方法
梱包方法は、作品の種類や特性によって異なります。それぞれの基本的な梱包方法を説明します。

1. 絵画の梱包
最初に作品を柔らかい無酸性のグレージングシートで覆い、直接の接触から保護します。次に、角にはフォームやコーナーガードなどの緩衝材を使用して作品を守り、厚手の段ボールや木枠でしっかりと囲み、固定します。さらに、外側にはエアキャップなどクッション性のある素材を巻き、最後に頑丈な外箱に入れ、隙間には緩衝材を詰めて輸送中の安全性を高めます。

2. 彫刻の梱包
作品の形状に合わせてカスタムフォームを作成し、直接接触から保護した後、彫刻全体をストレッチフィルムで覆って埃や湿気を防ぎます。さらに、頑丈な木箱に入れ、内部をフォームや緩衝材で固定します。大型や重量のある彫刻の場合には、専用のクレートを作成することもあります。

3. 陶芸品の梱包
各部位を無酸性の薄紙で個別に包み、破損しやすい部分には特に注意を払いながら追加の緩衝材を使用します。全体を泡状のフォームシートで包んで形状を維持し、二重箱方式を採用して内箱と外箱の間に緩衝材を入れます。また、箱の中で動かないように隙間にはペーパークッションなどを詰めて保護します。

4. 共通の注意点
すべての梱包材は無酸性で、作品に化学反応を起こさないものを選び、梱包後の箱には「割れ物注意」や「天地無用」などの表示を明確に行います。また、高価な作品の場合には、温度・湿度管理機能付きの専用コンテナを使用することもあります。

これらの方法は基本的なガイドラインであり、実際の梱包では作品の特性や輸送条件に応じて、さらに細かな調整や専門的な技術が必要になることがあります。

―アート梱包や美術品保護材といった専門の梱包材料
専門の梱包材料と技術には以下のようなものがあります。



1. アシッドフリーの材料
酸を含まない紙や段ボールは、作品の変色や劣化を防ぐため、美術品を直接包む際に広く使用されています。このような材料は、PHが7以上であり、硫酸バンドを一切使用しておらず、酸による劣化がない特徴を持っています。そのため、長期保存用に非常に適しており、資料や作品の保管に重宝されています。

2. シリカゲル
乾燥剤として湿気を吸収し、食品や製品の保存状態を向上させる効果があり、特にカビの発生を防ぐために重要な役割を果たします。一般的には、梱包ケースや袋の中に同梱されることが多く、製品の鮮度や品質を保つために欠かせないアイテムとして利用されています。非常に吸湿性が高く、周囲の湿気を素早く吸収することができるため、湿気対策に優れています。

3. エアキャップ(気泡緩衝材)
衝撃を吸収するために用いられる気泡シートであり、商品を包んだり、輸送中の隙間を埋めたりするのに広く利用されています。その表面に直径7mm~32mmほどの気泡が付いており、商品を保護すると同時に軽量性や柔軟性も備えています。衝撃から商品を保護するだけでなく、湿気や水からも守ってくれます。

4. フォームボード
軽量かつ丈夫な発泡スチロール製のボードであり、主に作品の保護や仕切りとして広く使用されています。この素材は通常、イベントや展示会などでの作品展示やディスプレイ用途に適しており、その軽さと丈夫さから取り扱いが容易であり、運搬時も便利です。また、加工性が高く、カッターやノコギリで簡単に切断することができるため、必要な形状やサイズにカスタマイズすることが可能です。

5. 中性紙
pHが中性に調整された紙であり、作品を直接包む際に使用されることが多く、長期保存にも適しています。通常の紙よりも酸性度が低いため、保存状態を良好に保ち、作品や資料の劣化を防ぐことができます。中性紙は、炭酸カルシウムの中和剤を添加することでpH値を調整し、保存性を向上させています。

6. アートセーフティーフィルム
静電気防止機能を備えたフィルムであり、主に絵画などの貴重な作品の表面保護に使用されます。このフィルムは、優れた帯電防止性を持ち、湿度に依存せず安定した表面抵抗値を長期間維持する特性を持っています。また、界面活性剤を添加することで、フィルムの取り扱いやすさを保ちながら表面の導電性を高めることが可能です。これにより、被覆された絵画などの静電気を帯びるリスクを低減し、作品の長期保存時に重要な役割を果たします。

7. コーナープロテクター
角を保護するために特別に設計された材料であり、フレームや彫刻の角を効果的に守る役割を果たしています。耐久性が高く、取り付けが簡単なため、多くの人々に利用されています。

8. カスタムクレート(木箱)
作品のサイズに合わせて特別に作られる木製の輸送箱であり、その高い保護性能から美術品輸送業界で広く利用されています。作品を適切に収めるために最適なサイズで作成されるため、作品が箱内で移動することなく安定した状態で輸送されることが保証されます。また、木材自体が自然素材であるため、環境にも優しく、再利用やリサイクルが可能です。

9. クライメートボックス
温度と湿度を精密に制御できる特殊な輸送箱であり、環境変化に非常に敏感な作品や製品の輸送に使用されています。温度や湿度の急激な変化は、美術品にとって破壊的であり、品質や価値を損なう可能性があるため、そのようなリスクを最小限に抑えるための最適なボックスとなっています。

10. ソフトパッキング材
綿やフェルトなどの柔らかい材料で構成されており、物品や機器などの傷や衝撃から守る役割を果たします。これらの材料は、しなやかで柔軟性がありながらも耐久性があり、表面を優しく包み込むことで、傷や汚れから守るだけでなく、長期間の保管や輸送中に安全に保護します。

11. 防振マット
特殊な素材と構造によって、振動を効果的に吸収し、作品や機器に与えるダメージを最小限に抑えます。軽量かつ耐久性に優れているため、様々な場面で活用が可能であり、特に輸送や保管時には欠かせないアイテムと言えます。

12. 真空パック
空気を抜いて密閉することで、環境からの影響を最小限に抑えます。

これらの材料を適切に組み合わせ、作品の特性に合わせて使用することが重要です。

温湿度管理の重要性

―美術品保存環境の理想的な温湿度条件
美術品の保存において、理想的な温度は18〜22℃で、急激な温度変化を避け、相対湿度は45〜55%が望ましいとされており、材質に応じて個別に調整が必要です。これらの条件を維持する理由としては、材料の劣化防止、化学反応の抑制、寸法安定性の確保、そして結露の防止が挙げられます。高温多湿はカビや虫害、低湿度は乾燥による亀裂や剥落を引き起こす可能性があり、温湿度が高いと化学反応が加速して材料の変色や劣化が進みます。これらの条件を厳密に管理するため、美術館や博物館では空調システムや除湿器、加湿器を使用し、24時間体制で環境をモニタリングしています。

―アート保管における温湿度管理用機器の制御や使用方法
温湿度管理に使用する機器には除湿機、加湿器、エアコン、温湿度計があります。理想的な環境条件として、温度は通常18~22℃、相対湿度は45~55%が推奨されます。温湿度計は定期的に校正を行います。(参考記事:「データロガーの校正とは?その重要性と目的の詳細解説」)

 除湿機は湿度が高い時に稼働させ、排水タンクを定期的に確認して空けましょう。加湿器は湿度が低い時に稼働させ、水の補充と清掃を定期的に行います。エアコンは温度設定を適切に行い、フィルターを定期的に掃除してください。さらに、季節による調整も重要で、特に温湿度変化が多い梅雨時期には注意が必要です。

振動と衝撃からの保護

―振動対策は万全?衝撃吸収材の選び方と使用方法
適切な衝撃吸収材の選択と使用方法が、作品の安全性を大きく左右します。衝撃吸収材には、ポリエチレンフォームやポリウレタンフォーム、EVAフォームなどのフォーム系材料、エアキャップやエアパッキンなどのエアクッション系、ハニカムボードや波型緩衝材などの緩衝紙、そしてシリコンゲルやポリマーゲルなどのゲル系材料があります。衝撃吸収材を選ぶ際には、作品の重量や形状、素材に合わせることが重要です。また、輸送方法や保管期間に応じた保護レベル、作品に悪影響を与えない化学的に安定した材料の選択、耐久性や再利用性も考慮すべきポイントです。

 使用方法としては、作品と衝撃吸収材の間に無酸性紙などの緩衝材を挟んで直接接触を避け、均等に圧力が分散するように配置することが求められます。さらに、異なる密度や特性の材料を組み合わせた多層構造や、作品の形状に合わせたカスタムフィッティング、滑りや移動を防ぐための固定方法も効果的です。特に貴重な作品や複雑な形状の場合は、美術品保存の専門家に相談することが推奨されます。これらの点を考慮し、最適な衝撃吸収材を選択し適切に使用することで、美術品を振動や衝撃から効果的に保護することが可能となります。

―アート輸送車両の選択と注意点
輸送車両の選択には、温度と湿度の管理機能や振動吸収システム、セキュリティ機能を確認しましょう。路面からの振動を和らげるエアサスペンション車や、作品の大きさに合わせた十分なスペースを確保できる車両も重要です。

 車内には、作品を固定するためのストラップやラック、滑り止めマット、エアクッション、そして専用フォームなどの緩衝材、一定の温度と湿度を維持する温湿度管理システムがあると良いでしょう。運転の際には、急発進や急減速、カーブでの速度を制御し、道路状況の良い経路や振動の少ない高速道路を選ぶことが望ましいとされています。積み込みや荷降ろし作業は、訓練を受けた専門スタッフが担当し、スロープやリフトを使用して段差での衝撃を軽減し、天候に応じた防水対策を講じる必要があります。

これらの点に注意を払うことで、アート作品を振動と衝撃から守りながら、安全に輸送することができます。

光と大気汚染からの保護

―UVカット材の使用
UVカット材には、窓ガラスに貼付するUVカットフィルムや作品の前面に設置するUVカットアクリル板、展示ケースや額縁に使用するUVカットガラス、展示空間の壁や天井に塗布するUVカット塗料などがあります。これらの材は、UVAやUVBの95-99%をカットし、作品の変色や退色を防止します。また、可視光線の調整により、作品に適した明るさを維持し、赤外線カットによって熱による劣化を軽減します。さらに、酸性ガスなどの大気汚染物質の侵入も防ぎます。

 UVカット材は、展示ケースや額縁、収蔵庫の窓、展示室の窓や照明器具に適用されます。選択時には、99%以上のUVカット率を推奨し、作品の視認性を損なわない可視光透過率や長期使用に耐える耐久性、中性であることなどを確認することが重要です。また、UV放出の少ないLED照明の使用や作品の光曝露時間の管理、温湿度管理との併用といった総合的な環境管理も求められます。

適切なUVカット材の使用は、美術品の長期的な保存と展示に大きく貢献します。

―アート保存における大気汚染対策の方法
最初に空気清浄システムの導入が推奨されます。大気質センサーの設置や定期的な空気質テストやデータをロギングして分析することで、環境モニタリングを徹底します。密閉展示ケースを使用して微小環境(マイクロクライメイト)を創出し、汚染物質の侵入を防ぐためのシーリングや、必要に応じて不活性ガス(窒素など)の充填を行います。展示や保管には、低VOC(揮発性有機化合物)材料や化学的に安定した材料を選択し、換気システムを最適化して外気導入量を調整し、適切なフィルトレーションを実施します。

 これらの対策は、温湿度管理と連携して行うことが大切です。温度は20℃±2℃、相対湿度は50%±5%を維持し、結露防止による二次汚染の抑制を図ります。微粒子を捕集する特殊クロスを使用した定期的なクリーニングや、専門家による作品の状態チェックも欠かせません。来館者管理では、入館者数の制限や、特に敏感な作品にはクリーンルームの設置が推奨されます。

美術品輸送における主な注意点

―温度と湿度の管理
適切な温湿度範囲を維持するためには、様々な技術と手法が用いられます。気候制御コンテナは精密な温湿度制御が可能です。これらは特に長距離や国際輸送に適しています。温度変化を緩和する相変化材料(PCM)を梱包材に組み込むことで、温度管理が強化され、湿度管理には、シリカゲルや調湿剤が効果的です。また、データロガーの導入によって、輸送全行程での温湿度を記録・監視し、異常があればすぐに対応できるようにします。これらの対策を講じることで、美術品を適切な環境で輸送し、作品の劣化やダメージを最小限に抑えることができます。

―振動と衝撃の防止
適切な梱包技術と輸送車両の選定が、この目標達成の第一歩となります。エアサスペンション車や温湿度管理機能を備えた専用アート輸送車の利用、さらには作品サイズに合った適切な輸送手段の選択が推奨されます。衝撃データロガーや振動計を設置し、データをリアルタイムで監視し、閾値を超えた場合にアラートを発信することが振動モニタリングの基本です。専門スタッフを配置し、慎重かつ効果的なコミュニケーションを確保します。

 また、緩衝材の適切な使い方が重要です。品物と床に適切に配置し、振動や衝撃を最小限に抑えるためにショックアブソーバー付きの台車を活用します。輸送中は、定期的に品物の状態を確認し、固定状況を再度確認して必要に応じて調整します。これらのポイントをしっかり守ることで、美術品を輸送中の振動や衝撃から効果的に保護できるでしょう。

美術品輸送におけるデータロガーの役割

―データロガーとは何か?
環境条件や物理量を自動的かつ記録する電子測定器であり、美術品輸送において極めて重要な役割を果たします。温度、湿度、光、衝撃などの環境要因を絶え間なく測定し(機種による)、規定された間隔で自動的にデータを記録する機能を有しています。長期のデータ収集が可能であり、輸送中の環境変化を詳細に分析し、問題発生時の原因特定や輸送プロセスの改善に役立ちます。データロガーの特徴として、小型で携帯性が高く、バッテリー駆動で長時間運用可能であることが挙げられます。さらに、大容量のデータ保存が可能であり、客観的なデータに基づく品質管理や、リアルタイムモニタリングが可能な機種も存在します。

―データロガーの重要性
美術館では作品を保存する際に、温度や湿度の微妙な変化が作品に影響を及ぼす可能性があるため、常に監視が必要です。データロガーは輸送中の温度や湿度を正確に記録し、作品が適切な環境下で保管されていることを確認するのに役立ちます。これにより、作品の劣化や損傷を未然に防ぐことができ、美術品の価値と美しさを永続させることが可能となります。また、美術品輸送におけるデータロガーは、過去の輸送の実績を蓄積し、将来の輸送計画に生かすことで、より効率的で安全な輸送を実現することができます。美術品の保護と保存において欠かせないデータロガーは、美術館業界において重要なツールとして広く活用されており、その存在は美術品の貴重な遺産を守るために欠かせないものと言えます。

データロガーを用いた美術品の運び方

―輸送前の準備と設定
輸送前には、データロガーの正確な設定が必要であり、5分・30分・60分など適切な測定間隔や衝撃の閾値設定を行うことが大切です。また、データロガーの設置場所や取り付け方法も慎重に検討する必要があります。輸送中に作品が受ける振動や衝撃、気温の変化などの影響を正確にモニタリングすることで、作品の状態を適切に管理できます。

―輸送中のモニタリング
輸送中の気温や湿度の変化をリアルタイムで監視し、作品が適切な環境下にあることを確認することができます。特に貴重な美術品や歴史的な作品を運ぶ際には、データロガーを活用することで、作品が適切な状態で到着することを保証します。

―輸送後のデータ分析と評価
収集されたデータは、指定された標準や指針と照らし合わせて評価されます。異常値が記録された箇所を特定し、その原因を調査することで、輸送中の問題点を明らかにしましょう。改善策には、経路の再検討や梱包方法の見直し、温湿度管理の強化などが含まれます。分析結果は報告書としてまとめ、関係者全員と共有し、今後の輸送計画に反映させます。

美術品輸送に適したデータロガーの種類と選び方

―温湿度ロガー
株式会社藤田電機製作所の"WATCH LOGGER"「KT-255U」は1台で温湿度を同時測定できます。操作も非常に簡単で、特別なスイッチを押す必要もなく、データ改ざんを防ぐための仕組みも備えています。詳しくはこちらの「KT-255U特設ページ」をご確認ください。

―振動・衝撃ロガー
同じく、株式会社藤田電機製作所の衝撃データロガーは衝撃、落下など外部からの影響を受けた瞬間を「X・Y・Z」という3軸加速度センサで記録します。具体的には、「どのくらいの衝撃(数値)」が「いつ(年月日時間)」「どの方向から(横・縦・奥行や前後)」加わったかがわかります。さらに、温度は「-40℃〜+80℃」、湿度は「0〜99%」まで同時に記録可能です。(機種による)こちらも「衝撃データロガー特設ページ」がございますのでご確認いただけますと幸いです。

美術品国際輸送の注意点

―美術館間の貸出展示での活用事例

以下はその実践例です。

1. 輸送中の温湿度モニタリング
美術館Aから美術館Bへの重要な絵画の輸送時に、温湿度ロガーを使用して環境条件をモニタリングしました。輸送中の温度や湿度の変動を監視し、異常があれば即座に対応しました。データロガーにより、輸送中の環境が安定していることが確認され、作品は無事に目的地に到着しました。このデータは今後の輸送計画の改善に役立ちました。

2. 展示中の環境監視
美術館Bでの特別展示において、複合環境ロガーを使用し、展示ケース内の温度、湿度、光量を継続的に記録しました。定期的にデータを確認し、展示室の環境が適切であることを確認しました。これにより、作品の状態が最適に維持され、展示終了後のデータ分析によって展示環境の最適化に関する貴重なフィードバックが得られました。

3. 緊急時対応
美術館Cから美術館Dへの急な貸出に際し、輸送中に予期せぬ温度変化が発生しました。スタッフは迅速に対応し、温度調整が可能な環境で再梱包を行いました。これにより、美術品は無事に到着し、緊急時の対応手順が明確になりました。

これらの事例から、データロガーの使用は美術品の輸送および展示中の環境管理を精密に行い、問題が発生した際の迅速な対応を可能にすることがわかります。

―国際輸送における成功例


WATCH LOGGERのホームページで公開されている”お客様の声”でアーティゾン美術館様はパリのオランジュリー美術館に絵を輸送する際(インタビュー:「アーティゾン美術館」様)データロガーを取り付け温湿度と衝撃の監視と、経験豊富な専門スタッフによる継続的な状態チェックが行われた結果、作品は無事に目的地に到着し、展示されました。

美術品国際輸送の注意点

―通関手続きと必要書類
データロガーを海外に輸送する際に必要な主な書類は以下の通りです。



1. 該非判定書(非該当証明書)
輸出するデータロガーが外国為替及び外国貿易法の規制対象に該当するかを判定する書類です。該当品の場合は輸出許可が必要になるため、事前に作成が必要です。

2. 安全データシート (SDS)
データロガーに含まれる化学物質の情報を記載した書類で、化学品の安全な取り扱いや輸送時の注意事項が含まれています。

3. 製品仕様書(取扱説明書)
データロガーの詳細な仕様情報を提供する書類で、重量、寸法、材質、性能など、輸送条件の判断に必要な情報が含まれています。

これらの書類を事前に準備し、輸出先の法規制に合わせて適切に対応することで、データロガーの安全かつスムーズな海外輸送が可能となります。詳しくは「輸出書類」のページをご確認ください。

データロガー活用のメリット

―作品の保護と保存状態の維持
温度、湿度、光、衝撃などの要因を測定し(機種による)、設定範囲外になるとアラームが表示され、データを確認することで迅速に対応することができます。

―輸送品質の向上と信頼性の確保
環境を正確に記録できます。輸送中に温度や湿度、衝撃などの条件を継続的に測定することで、総合的な品質を向上させます。

―保険対応や責任所在の明確化
保険対応や責任の所在を明確にするための重要な証拠となります。例えば、輸送中に発生した問題や保管環境の変化によって作品に損害が生じた場合、データロガーの記録は保険請求の根拠として利用できます。

データロガーを活用した美術品輸送の未来展望

美術品の輸送は、慎重かつ確実な取り扱いが求められます。適切な梱包や運搬方法を選択し、輸送中の環境管理にも留意することで、美術品を安全に運ぶことが実現できます。また、職人技術や専門知識を持つプロフェッショナルの協力を得ることも大切です。美術品の輸送が成功するためには、計画的なアプローチと綿密な準備、そしてデータロガーによる可視化された数値による分析が欠かせません。

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