
鉄道輸送とは?利用するメリット・デメリットを解説
鉄道輸送とは、列車を活用して貨物を運搬する方法です。定時性が高く一度に大量の貨物を輸送できるのがメリットで、2024年問題をはじめとするトラック輸送が抱える課題の解決策として再注目されています。
とはいえ、鉄道輸送にも注意点や弱点があるため、「鉄道輸送のメリット・デメリットを確認してから導入を検討したい」という担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、鉄道輸送とは何か、メリットやデメリットを解説します。自社の物流への鉄道輸送の導入を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。
鉄道輸送とは
鉄道輸送とは、鉄道網を利用して貨物を運搬する方法です。旅客輸送とは異なり、物流の一部として重要な役割を担っています。とくに日本国内では、JR貨物が中心となって運行しており、工場・物流センター・港湾などとの接続を行っています。
鉄道輸送の最大の特徴は、大量輸送と定時性です。トラック輸送に比べ、1列車あたりの輸送可能重量は非常に大きく、たとえば26両編成の貨物列車は、大型トラック約65台分に相当する積載量を誇ります。さらに、鉄道は専用の線路を走行するため、渋滞や交通規制などの影響を受けにくく、定刻通りの運行が可能です。
また、鉄道輸送は環境負荷が少ない輸送方法としても知られており、CO₂排出量が少ないことから、近年では企業のESG対応の一環としても再注目されています。大量かつ安定的に商品を運ぶニーズにマッチする輸送手段として、改めて価値が見直されている方法です。
鉄道輸送で使うコンテナの種類
ここでは、鉄道輸送に使用される代表的なコンテナについてチェックしておきましょう。
–12フィートコンテナ(一般的な小型コンテナ)
日本国内の鉄道輸送で最も一般的に使用されているのが12フィートコンテナです。外寸が約3.6メートルとコンパクトな設計で、小回りの利く輸送ができます。荷重は最大5トン程度で、一般的な日用品・紙製品・加工食品・工業部品など、さまざまな用途に対応可能です。
日本全国の貨物駅に対応するプラットフォームや積み下ろし設備が整っており、地方間の輸送や複合一貫輸送にも適しています。12フィートコンテナは標準化されているため、運用の柔軟性が高く、日々の運行における使い勝手の良さが利点です。
–20フィート・30フィートコンテナ(大型・多用途タイプ)
より大量の貨物輸送を目的とした20フィートおよび30フィートコンテナは、中型から大型に分類されるタイプで、パレット積みにも対応可能です。これらのコンテナは、重量物やかさばる貨物、産業用機械、鋼材、建材などの輸送に向いています。
とくに30フィートコンテナは高い輸送効率を実現できることから、長距離間の輸送で多く採用されています。ただし、特殊な荷役機器を備えたターミナルでの積み下ろしが前提となる点には注意が必要です。
–タンクコンテナ(液体・高粘度貨物向け)
タンクコンテナは、液体の貨物や粘度の高い化学製品などを安全かつ効率的に輸送するために設計された専用コンテナです。食品グレードのタンクを備えたタイプは、食用油・清涼飲料・アルコール類などの食品関連貨物に対応しており、密閉性が高く衛生的な環境を保ちます。
一方、化学薬品や工業用溶剤などを輸送するタイプでは、危険物輸送に関する法令や国際基準に対応しており、専用バルブや圧力調整装置を備えた仕様です。これにより、漏洩や爆発リスクを最小限に抑える設計が施されています。
–冷蔵・冷凍コンテナ(温度管理が必要な貨物用)
冷蔵・冷凍コンテナは、温度管理が必要な貨物の輸送に使用される輸送用容器です。たとえば生鮮食品、冷凍食品、医薬品などの輸送に使用されます。これらのコンテナには冷却装置が備えられており、輸送中でも設定された温度帯を保ち続けることが可能です。
とくに長距離輸送においても品質劣化を防ぎ、安全・安心な流通を実現します。最近では省エネ設計の装置や、温度監視センサー、通信機能を備えた高機能コンテナも登場しており、より高度な物流ニーズに対応可能です。
鉄道輸送でトラック輸送のみに偏らないモーダルシフト
モーダルシフトとは、主にトラックで行われていた貨物輸送を、鉄道や船舶といった環境負荷の少ない輸送手段に切り替えることです。この背景には、労働力不足や環境対策、災害リスクへの対応といった多様な社会課題があります。
とくに日本では、ドライバーの高齢化や働き方改革に伴う「2024年問題」により、長距離トラック輸送の持続性に対する懸念が広がっています。その対策として進められているのが、安定した運行が可能でCO₂排出量も少ない鉄道への転換です。
鉄道は長距離輸送において高い効率性を持つ一方で、集配や最後の配送部分を担うトラックとの連携が不可欠です。このため、鉄道とトラックを組み合わせた「複合一貫輸送」が一般化しており、物流会社の多くがこうしたサービスを提供しています。
モーダルシフトの導入には、施設整備やオペレーション変更といった初期対応が必要です。ただ、長期的にはコスト削減・持続可能な輸送体制の構築・環境負荷軽減の実現といった多くのメリットがあるといえるでしょう。
鉄道輸送のメリット
鉄道輸送のメリットとして、以下の3点を紹介します。
- CO₂排出量削減につながる
- トラックの長距離輸送の削減につながる
- 安定した輸送を実現できる
–CO₂排出量削減につながる
鉄道輸送の最大の利点のひとつは、輸送に伴うCO₂排出量が非常に少ないことです。一般的に、1トンの貨物を1km輸送した際のCO₂排出量は、トラック輸送に比べて鉄道輸送の方が約1/10とされています。これは、鉄道が電力やディーゼル機関車を使い、効率的に多数の貨物を一度に運ぶことができるためです。
とくに定期便として長距離輸送を行う場合、その差はより顕著になります。企業のESG活動やサステナブルな経営が重視される現代では、サプライチェーン全体の脱炭素化が求められており、鉄道輸送の環境優位性は大きな注目を集めています。
また、CO₂だけでなく、窒素酸化物や微小粒子状物質といった大気汚染物質の排出も少なく、都市部での環境改善にも貢献できます。企業が社会的責任(CSR)を果たすうえでも、鉄道へのモーダルシフトは強力な手段のひとつです。
–トラックの長距離輸送の削減につながる
鉄道輸送の導入により、これまで長距離輸送を担っていたトラックの負担を大きく軽減することが可能です。とくに、関東〜関西や関東〜九州といった中〜長距離の物流ルートでは、鉄道の定時性と大量輸送力を活かして、輸送効率を大幅に向上させることができます。
トラックによる長距離運行では、ドライバーの拘束時間や運転者不足が深刻な課題となっており、2024年問題がその懸念をさらに強めています。こうした背景からも、トラック輸送の一部を鉄道へと移行させることは、物流業界全体にとって持続可能な成長への重要なポイントだといえるでしょう。
また、トラック台数の削減は、道路の混雑緩和や交通事故リスクの低下にもつながり、社会全体の安全性向上にも寄与します。鉄道とトラックを連携させた複合輸送は、今後の物流モデルの中核となるといえるでしょう。
–安定した輸送を実現できる
鉄道輸送は、その運行スケジュールの安定性と高い定時性により、ほかの輸送手段と比べて優れた信頼性を誇ります。
道路輸送では、渋滞や事故、天候などの不確定要素によって予定通りに荷物を届けられないリスクが常に存在します。しかし、鉄道輸送は専用のレール網を使用し、定められたダイヤに基づいて運行されるため、これらの外的要因の影響を最小限に抑えることが可能です。
とくに、工場間や拠点間で定期的な輸送を行う場合、その安定性は生産スケジュールの精度向上や在庫管理の最適化にもつながります。さらに、貨物列車は一定の温度管理や密閉性のある輸送環境を提供できるため、品質保持や衛生面でも有利です。
鉄道輸送のデメリット
鉄道輸送の主なデメリットとして、以下の3つを紹介します。
- リードタイムが延長する可能性がある
- 自然災害の影響を受けやすい
- 柔軟性に欠ける
–リードタイムが延長する可能性がある
鉄道輸送は長距離・大量輸送には優れているものの、輸送にかかるリードタイム(納品までの時間)がトラック輸送に比べて延びる場合があります。その理由のひとつが前後工程の存在です。
鉄道輸送では、出発地と到着地のいずれにも貨物駅が必要であり、駅から実際の工場や倉庫、店舗などへの集配には結局トラック輸送が必要となります。これにより、輸送中の積み替え作業が発生し、結果的に所要時間が長くなる可能性があるでしょう。
また、鉄道は定時運行であるがゆえに、急な出荷や納期変更に対応しづらく、柔軟性に欠ける点も注意点です。リードタイムの長期化は、とくに短納期が要求されるEC物流や生鮮食品などの分野では致命的な課題となりうるため、導入前の慎重な判断が必要です。効率と安定性を優先するか、スピードを重視するかによって、最適な輸送手段を選ぶ必要があります。
–自然災害の影響を受けやすい
鉄道は道路とは異なり、専用の線路や橋梁、トンネルなどのインフラに依存しています。そのため、地震や台風、大雨、土砂崩れ、落雷、大雪などの自然災害が発生すると、その影響を直接受けやすいという点はデメリットです。
実際、豪雨による線路冠水や土砂流入、大雪によるポイント故障や立ち往生など、さまざまな事例が報告されています。とくに日本のような自然災害が多い国では、輸送ルートの途絶による物流の停滞がしばしば問題となります。
さらに、鉄道インフラの復旧には時間とコストがかかるため、災害時の復旧スピードは道路輸送に比べて劣るケースが多いのも事実です。災害発生時に柔軟に迂回ルートを確保しづらい点も鉄道輸送のデメリットのひとつといえます。リスク回避のためには、BCP(事業継続計画)に鉄道不通時の代替ルートを盛り込むなどの対策が必要不可欠です。
–柔軟性に欠ける
鉄道輸送のもうひとつの課題は、輸送オペレーションにおける柔軟性の低さです。鉄道はあらかじめ決められた路線・ダイヤで運行されるため、急な出荷変更や配送先の変更に即応することが難しい傾向があります。
加えて、貨物駅までの距離が長い場合や、納品先が駅から離れている場合には、トラックによる二次配送が必要となり、全体の効率が下がる可能性もあるでしょう。また、小口配送や多頻度配送には不向きであり、個人宅への配送や時間指定が求められるBtoC物流とは相性が悪い面があります。
こうした特性から、鉄道輸送はすべての物流ニーズに対応できるわけではなく、製品特性や輸送条件を踏まえたうえでの導入が必要です。
まとめ
本記事では、鉄道輸送とは何か、メリットやデメリットについて解説しました。鉄道輸送はトラック輸送と比べると、環境負荷を抑えつつ大量の貨物を輸送できる定時性の高い方法です。一方、リードタイムが延びる可能性がある点や、柔軟性に欠ける点には注意が必要で、トラック輸送と組み合わせた輸送計画が求められます。
鉄道輸送では、拠点〜貨物駅間での荷物の積み替えが発生することもあり、輸送中の貨物の破損などもリスクとして考えられます。こうしたトラブルへの対策には、株式会社藤田電機製作所のデータロガー「WATCH LOGGER」がおすすめです。
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