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AI時代のデータセンター運用における温湿度管理の重要性

AI時代のデータセンター運用における温湿度管理の重要性

AI技術の急速な進歩により、データセンターの重要性はかつてないほど高まっています。膨大な情報処理と保管を担うこれらの施設は、現代社会のデジタルインフラストラクチャーの要となっています。しかし、高度な技術の集積地であるデータセンターの安定稼働には、意外にも基本的な環境要因が大きく影響しています。その中でも特に重要なのが、温度と湿度の管理です。

 適切な温湿度管理は、データセンターの信頼性、効率性、そして長期的な持続可能性を確保する上で不可欠です。過去の事故事例を見ると、温湿度管理の失敗が深刻な障害や多大な経済損失をもたらしたケースが少なくありません。AI時代においては、データの重要性がさらに増大し、その処理量も飛躍的に拡大しています。そのため、データセンターの安定運用はこれまで以上に重要な課題となっています。本コラムでは、データセンターにおける温湿度管理の重要性を再確認し、適切な管理方法や最新のツールについて詳しく解説します。

目次

データセンターにおける温湿度管理の重要性

―なぜ温湿度管理が必要か?

データセンターにおける温湿度管理は、「機器の保護と寿命延長、エネルギー効率の最適化、システムの性能維持と信頼性確保」のために不可欠です。適切な環境条件を保つことで、ハードウェアの故障リスクを低減し、静電気や結露による損傷を防ぎます。また、冷却システムの効率を高めることで電力消費を抑え、IT機器の最適な環境になり動作もスムーズになります。データセンターの安定運用と効率的な管理において、温湿度管理は極めて重要な役割を果たしています。

―温湿度管理を怠った過去の事故事例

データセンターにおける温湿度管理の失敗による過去の事故事例をいくつか紹介します。

1. 空調システムの故障
2017年、オーストラリアのシドニーで、空調システムの故障により、大手銀行のデータセンターが一時停止しました。これにより、ATMやオンラインバンキングサービスが数時間にわたって利用できなくなりました。

2. 冷却システムの故障
2013年、アメリカのニュージャージー州で、データセンターの冷却システムが故障し、高温によってサーバーが自動的にシャットダウンしました。この事故により、複数の大手ウェブサイトがダウンし、多大な経済的損失が発生しました。

これらの事例は、データセンターにおける適切な温湿度管理の重要性を示しています。温度や湿度の管理に失敗すると、機器の故障、データ損失、サービス中断など、深刻な結果をもたらす可能性があります。

データセンターの適切な温度管理

―推奨温度範囲

データセンターの適切な温度は一般的に「+18℃〜+27℃」の範囲が推奨されています。ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)のガイドラインに従うことが多いです。ASHRAEは1894年に設立された歴史ある組織で、暖房、換気、空調、冷凍(HVAC&R)分野で世界的に認められた専門家集団です。その長年の経験と専門知識が、ガイドラインの信頼性を高めています。

―高温/低温がもたらす影響

データセンターの温度管理は非常に重要です。高温や低温は機器やシステムに様々な悪影響を及ぼす可能性があります。以下に、高温と低温それぞれがもたらす影響について説明します。

【高温の影響】
1. 機器の性能低下
CPUやGPUなどのプロセッサーの処理速度が低下します。メモリの読み書き速度が遅くなる可能性があります。

2. 電力消費の増加
冷却システムの負荷が高まり、電力消費が増加します。機器自体も高温下でより多くの電力を消費します。

3. ハードウェアの寿命短縮
電子部品の劣化が加速します。ハードディスクドライブ(HDD)の故障率が上昇します。

4. システムの不安定化
予期せぬシャットダウンやクラッシュが発生する可能性が高まります。データの破損やロスのリスクが増加します。

5. 火災リスクの増加
極端な高温は電子機器の発火リスクを高めます。

【低温の影響】
1. 結露の発生
機器表面に水滴が付着し、短絡や腐食の原因となる可能性があります。

2. 機器の起動問題
特に古い機器や特定のハードディスクでは、極端な低温時に起動しにくくなることがあります。

3. 部品の収縮と膨張
温度変化による部品の収縮と膨張が繰り返されると、はんだ接合部の劣化や部品の破損につながる可能性があります。

4. バッテリー性能の低下
UPS(無停電電源装置)などのバッテリーの性能が低下する可能性があります。

5. 静電気
特に冬の間は注意が必要です。

データセンターの適切な湿度管理

―推奨湿度範囲

具体的な値は、使用している機器の仕様・データセンターの場所や気候条件・運用コストの最適化によって若干変動する可能性がありますが一般的には、「45%〜55%」です。

―高湿度/低湿度がもたらす影響

湿度管理には、除湿器や加湿器の適切な使用、エアフローの最適化、定期的なモニタリングなどが必要となります。

【高湿度の影響】
1. 結露
機器表面に水滴が形成され、電子機器の短絡や腐食を引き起こしやすいです。

2. 腐食
金属部品の酸化を促進し、機器の寿命を縮めます。

3. カビの発生
高湿度環境はカビの成長を促進し、機器や建物構造に悪影響を与えます。

4. 冷却効率の低下
空気中の水分が増えることで、冷却システムの効率が低下し、エネルギー消費が増加します。

5. ディスクドライブの故障
湿気がハードディスクドライブに侵入し、データの損失や機器の故障を引き起こす可能性があります。

【低湿度の影響】
1. 静電気の増加
静電気放電(ESD)のリスクが高まり、電子機器の損傷や誤動作が起こるかもしれません。

2. 乾燥による材料の劣化
プラスチック部品や絶縁材の乾燥を促進し、機器の早期劣化が懸念されます。

3. 人体への影響
作業者の快適性を損ない、生産性の低下につながる可能性があります。

4. 静電気によるデータエラー
特に磁気テープなどのストレージメディアにおいて、静電気がデータの読み取りや書き込みエラーが起きます。

効果的な温湿度管理の方法

―データロガーを活用した温湿度管理

データセンターの効果的な温湿度管理方法として、データロガーを活用した温湿度管理について説明します。データロガーとは、「環境条件を自動的に測定し記録する小型の電子機器」です。温度や湿度、時には気圧や光量など(機種の性能による)を定期的に測定し、そのデータを内部メモリに保存します。そんな、データロガーで何ができるのでしょうか。

1. 継続的なモニタリング
24時間365日、設定した測定周期で温湿度を測定し記録します。一般的には5~10分間隔が多いです。

2. データの可視化
ロギングすることで収集したデータをグラフや表で表示し、環境の変化を視覚的に把握できます。

3. アラート機能
設定した閾値を超えた場合、管理者に通知を送ることができます(機種の性能による)

4. 遠隔監視
ネットワーク接続型のデータロガーなら、離れた場所からリアルタイムで状況を確認できます。

5. 労力の削減
自動記録により、手動での測定や記録の手間が大幅に減ります。

例えば、あるデータセンターでデータロガーを導入したところ、夜間に湿度が急激に上昇する傾向が見られました。この情報をもとに空調システムの設定を調整することで、機器の故障リスクを低減し、同時に冷却効率を向上させてエネルギーコストの削減にも成功しました。このように、データロガーを活用することで、データセンターの環境をより精密に、効率的に、そして予防的に管理することが可能になります。

―WATCH LOGGERで何ができるのか?

株式会社藤田電機製作所の"WATCH LOGGER(ウォッチロガー)"は、データセンターの温湿度管理に有効なツールです。

1. 長期間測定ができる
スタンダードなモデルで電池寿命が約3年です。電池を頻繁に交換する手間がなくなり、また電池は市販のコイン電池を採用しておりますのでランニングコストがおさえられます。機能は最先端ですが、電池は専用電池、特殊電池といったデータロガーもあるので事前によく確認しましょう。

2. 「かんたん・わかりやすい・使いやすい」で作られた製品



WATCH LOGGERは複雑な方法をなるべく省いています。ハードはスイッチレスで押し間違いがなく、ソフトウェアも直感的に操作できるUIになっています。ソフトウェアの詳細はこちらから。

3. 温度マッピング機能搭載


温度マッピングとは、特定の環境やエリア内で温度分布を詳細に記録し、分析するプロセスのことを指します。これは、特に温度が一定であることが求められる場所で非常に重要な手法です。WATCH LOGGERには無料でその機能があります。(詳細記事:「場所で温度が違う?温度分布から見るマッピングの重要性」)

無料で約3週間の"デモ機レンタルサービス"も行っておりますので、是非気軽にお問い合わせください。

まとめ

―データセンターの安定運用と温湿度管理の将来展望

データセンターの温湿度管理は、単なる環境管理の一環ではなく、データセンターの運用全体において重要な要素であることが改めて明らかとなりました。AI時代においては、適切な温湿度管理を行うことでデータセンターの効率性や信頼性を高め、持続可能な運用を実現することが求められます。温湿度管理に注力することで、データセンターの未来により一層の光明が見えてくるでしょう。

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