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デザイン政策・経営が神奈川県の中小企業に与えた効果

デザイン政策・経営が神奈川県の中小企業に与えた効果

経済産業省の「デザイン政策」と特許庁の「デザイン経営」は、中小企業に新たな展望をもたらしています。業績やブランド価値の向上だけでなく、イノベーションを促進し、競争力を高める手段としても注目されている中、デザインを経営に取り入れることで、市場での差別化や顧客満足度の向上に繋がる可能性があります。この記事では、デザイン政策・経営が中小企業に与える効果に焦点を当て、具体例を踏まえながらデザイン戦略の重要性について探求していきます。

目次

デザイン政策・デザイン経営とは?

―経済産業省が推進する政策の概要

経済産業省が推進する「デザイン政策」は、1958年にデザイン課を設置して以来、組織や業務の変革を通じて様々な取組を行ってきました。その目的は、行政にデザインアプローチを取り入れ、人にやさしい政策を実現することであり、具体的には「JAPAN+D」プロジェクト(デザインを活用したイノベーションを促進する取り組み)を通じて、国と地域のデザイン政策の好循環や地域間の相互作用を促進し、経済の活性化や文化創造、社会課題の解決に貢献することを期待しています。

また、経済産業省が発行する「デザイン政策ハンドブック」はご存知でしょうか。国や地域のデザイン政策に関する情報を提供し、関係者や一般の方々に対して、デザインの重要性や活用方法について理解を深めてもらうために作成されています。このようなプロジェクトやハンドブックは国内外で注目される日本のデザイン力やクリエイティビティをさらに高めるための一環として展開されています。社会が大きく変化する中、デザインが持つ潜在力を最大限に活用することで、日本の持続的な成長を促進することを目指しています。

―特許庁が推進する政策の概要

特許庁が推進する「デザイン経営」は、ビジネスにおいてデザインの力を活用し、ブランド構築やイノベーション創出に役立つ手法です。このアプローチの本質は、自社の技術ありきではなく、お客様即ち、ユーザーを中心に考えることで、潜在的な課題を見つけ出し、柔軟に新しい解決策を生み出すことにあります。ですが、ブランディングの解釈が各々異なる状態や経営陣の理解不足も否めません。そのため、特許庁はデザイン経営の理念や手法を広め、企業が競争力を高め、持続可能な成長を達成できるようデザイン経営のセミナーやワークショップの開催、成功事例の共有、デザイン関連の情報提供などを行い、支援しています。デザインの質が上がることがブランド価値の向上に繋がり、ブランド価値が上がることで売り上げに繋がると明確にできるのがデザイン経営の賜物です。

企業への効果

―業績やブランド価値の向上に及ぼす影響

デザインは単なる美的要素ではなく、企業の核となる価値やブランドイメージを表現する重要な要素であり、その適切な活用は競争力強化に直結します。組織がデザインをより良く活用するためには、デザインを経営資源と捉え、効果的かつ効率的にマネジメントする必要があります。
他社のサービスと比較し、デザインの重要性に気付くことはありませんか?機能の優位性、価格等にどうしても目を奪われがちですが、使い勝手の良さや相互作用・やり取り等をもう一度、お客様目線で考えてみましょう。デザインは単なる装飾以上の、経営戦略や価値創造において不可欠な要素であると言えます。デザインを経営に活用することで、企業は持続的な成長と競争力の強化を図ることができます。

具体例と展望

―中小企業が取り組んだデータロガー「WATCH LOGGER」の具体例

2000年代初頭に発売した温度・湿度・衝撃を自動記録する株式会社 藤田電機製作所のWATCH LOGGERはデータロガーという測定器のイメージを一新させたデザインを採用しました。従来、測定器と言えば技術水準や職人の技量、そして産業の発展が垣間見える製品ですが、デザインはそれほど重要視されていなかった模様です。


当時のN専務は組織におけるデザイン活用の段階を表した「デザイン・ラダー」(デザインの段落)を製品・サービス開発から取り入れました。企業が一貫したメッセージを伝えるためにスポーツブランド、書体、シンボルマークを得意とするアレックスデザイン代表のデザイナー桑名大伸さんがブランディング・デザインを手がけました。(桑名大伸さんのインタビューはこちら


その洗練されたデザインは"2009年グッドデザイン賞"を受賞し、「いかにも測定器」と思えないデザインが景観を損ねたくないユーザーの共感を得て、美術館や博物館に多く採用されています。(アーティゾン美術館様のインタビューはこちら
また、測定器というイメージをポップした結果、BtoBではなくBtoCの一般ユーザーにも広く受け入れられました。機能とデザインの間に考えられたアイディアが「誤動作を起こさないスイッチレス採用」、「水深1mに30分浸けても機器に影響を受けないIP67の防水構造」、「壊れにくい頑丈設計で海外輸送に最適」など様々な付加価値を生みました。


100台以上のWATCH LOGGERを使用されるお客様は、ブランドイメージを向上させるために、独自のパネルを採用しています。この取り組みは、顧客との関係を強化し、信頼感を高めることで、企業の価値をさらに高める効果があります。オリジナルパネルの採用は、他社との差別化を図るだけでなく、商品やサービスの特徴をより強調する手段としても機能しています。

―デザイン政策・経営の今後の期待と発展に向けた展望

デザイン政策・経営の今後の期待と発展に向けた展望は、経済産業省が「これからのデザイン政策を考える研究会」を新設するなど、デザインの活用を拡大し、企業や地域の活性化、社会課題の解決、新たな文化創造に寄与する取り組みが進められています。この研究会では、デザインへの理解を深め、デザイン活用を促進するための施策が議論され、デザインが単なる「見た目の美しさ」だけでなく、空間や環境、コミュニティにも関わる広い意味で捉えられるようになることが期待されています。
また、現在の課題として、社長や創業者がデザインの関与に積極的ではない、デザインの定義が人によって異なる、デザインに関する情報共有や連携が不十分であることが挙げられており、これらの課題を克服するための取り組みが今後ますます重要となるでしょう。

デザイン政策室では、デザインやデザイン業の振興を通じて産業競争力の強化や経済の活性化、社会課題の解決を目指しており、調査研究・研究会、活用促進・人材育成、地域・団体との連携など幅広い施策を展開しています。「デザイン思考」や「デザイン経営」といった言葉を社内で議論し、このような取り組みを今後一層進展し、さらなる飛躍を遂げる展望がすぐそこに見えています。

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