
緩衝材の役割や種類から、代わりになるものまで解説!
輸送中の製品を守る重要な役割を担う緩衝材。「衝撃の吸収」を主な機能として、様々な製品を輸送時のダメージから守ります。
プチプチ、エアークッション、発泡緩衝材、クラフト紙、ポリエチレンシートなど、多岐にわたる種類があり、それぞれが独自の特性で製品を保護しています。環境に配慮した代替品として、新聞紙や段ボールの切れ端なども活用できますが、精密機器には専用の緩衝材が不可欠です。
本記事では、緩衝材の役割や種類から、緩衝材の代わりになるものまで解説します。
緩衝材の役割

緩衝材は、輸送や保管において、製品を様々な外的要因から守る重要な役割を担っています。代表的なものとして、製品に加わる衝撃を緩和する「衝撃の吸収」、輸送中の荷崩れや内容物の偏りを防ぐ「隙間を埋める」、そして湿気や水の侵入から製品を守る「水から守る」という3つの役割が挙げられます。
衝撃の吸収
輸送時の落下や振動などにより、製品に衝撃が加わることがあります。こうした衝撃は、破損や内部故障の原因となるため、確実な対策が求められます。
緩衝材は衝撃を吸収・分散し、製品に直接伝わる負荷を軽減します。これにより、大切な製品を安全な状態で配送することが可能になり、品質維持や信頼性の確保にもつながります。
隙間を埋める
緩衝材で隙間を埋めることで輸送中の荷崩れを防止できます。荷物が箱の中で動いたり傾いたりすると、商品同士がぶつかり破損する恐れがありますが、緩衝材で隙間をなくすことで個々の荷物が固定され、安定した状態で運ばれます。
また、緩衝材を丁寧に詰めることで梱包の見栄えも向上し、受け取る側に安心感と丁寧な印象を与えます。
水から守る
水や湿気の影響で商品が劣化したり、カビや腐敗の原因となる可能性があります。緩衝材は商品を外部からの水や湿気から保護する役割を果たし、商品の品質を維持することができます。
特に、運送中や保管中に水の侵入や漏れが起こるリスクがある場合、適切な緩衝材を使用することで商品を確実に保護することができます。
緩衝材の種類

緩衝材の種類は多岐にわたり、保護する製品の特性や輸送環境、コストなどに応じて最適なものが選択されます。
プチプチ
「プチプチ」は、気泡緩衝材(きほうかんしょうざい)やエアキャップ、バブルラップといった名称でも広く知られている梱包資材で、ポリエチレンなどのフィルムで作られたシート状の素材です。表面には無数の空気を含んだ小さな気泡が形成されており、この独特の構造によって優れた緩衝性能を発揮します。
気泡が潰れることで衝撃を吸収し、内部の製品へのダメージを軽減するため、精密機器やガラス製品、電子部品など、繊細なものの保護に非常に適しています。
また、素材の大半が空気と軽量なフィルムで構成されているため、保護性能を高めつつ梱包全体の重量を抑えることができ、輸送コストの削減にも寄与します。
柔軟性と加工性にも優れており、シート状や袋状など多様な形状に展開されているため、様々なサイズ・形状の製品に対応可能です。
この柔軟さに加え、内部の空気が断熱材として機能することから、温度変化に弱い製品の保護にも利用されるほか、ポリエチレンフィルムの防水性により、一定程度の水分からも製品を守ることができます(ただし完全防水ではありません)。
電子機器向けには静電気対策が施された「静電気防止タイプ」も存在し、静電気に弱い製品の安全な輸送をサポートします。丈夫で再利用可能な点も、多くの現場で重宝されている理由のひとつです。
エアークッション
「エアークッション」は、空気の力を利用して衝撃を吸収する緩衝材です。主にポリエチレンやナイロンなどのフィルムで作られた袋状の容器に空気を密封した構造で、形状やサイズは非常に多様です。内部の空気がクッションとして働き、衝撃に対して優れた保護性能を発揮します。素材が軽量であることから、梱包物の総重量を増やさずに十分な保護効果を実現でき、輸送コストの削減にも貢献します。
また、多くのタイプは使用直前に空気を注入する方式のため、未使用時はコンパクトに保管でき、限られたスペースでも効率的に管理できます。
さらに、紙製緩衝材のような粉塵が発生しないため、精密機器や電子部品など清潔さが求められる製品の梱包にも適しています。静電気対策が施された製品もあり、用途に応じた使い分けが可能です。
エアークッションにはさまざまな種類があります。たとえば、箱内の隙間埋めに便利な小型の「エアピロー」、ボトルなど細長い製品向けの「チューブ型」、包む用途や緩衝敷きとして使える「エアークッションフィルム」、重たい製品の支えとして役立つ「ブロック型」などがあります。
一方で、鋭利なものには弱く、穴が開くと空気が抜けてしまうため、緩衝効果が失われる可能性があります。空気注入に専用機器が必要な場合があることや、大量に使用した際の廃棄物のかさばりも注意点として挙げられます。
発泡緩衝材
「発泡緩衝材」は、合成樹脂などの原料を発泡させて作られる、軽量でクッション性に優れた緩衝材の総称であり、梱包材として広く利用されています。その種類は多岐にわたり、原料や発泡方法、形状に応じて様々な特性を持っています。
主な特徴としては、無数の気泡構造によって外部からの衝撃を吸収・分散し、内容物をしっかりと保護する優れた衝撃吸収性が挙げられます。また、発泡体特有の軽量性により、梱包全体の重量を抑えながら十分な保護効果を発揮できる点も大きなメリットです。
さらに、発泡緩衝材は成形性や加工性に優れており、熱加工や切削によって製品形状に合わせたカスタム対応が可能です。これにより、複雑な形状の製品でも隙間なく包み込むような緩衝材が作れます。
加えて、内部の気泡が空気の層となることから、断熱性や保温性にも優れており、温度管理が求められる製品の梱包にも適しています。耐水性や防湿性も備えているものが多く、輸送中や保管中の湿気から製品を保護することも可能です。
発泡スチロール(EPS)は軽量で断熱性・緩衝性に優れており、家電製品や食品などの保護に広く使用されています。発泡ポリエチレン(PEフォーム)は柔軟性と耐水性、耐薬品性を兼ね備え、表面保護や隙間埋めに適しています。発泡ポリプロピレン(EPP)は強度が高く、繰り返し使用にも耐えることから、自動車部品や医療機器などに用いられます。ポリウレタンフォーム(PUフォーム)は柔軟で弾力性があり、精密機器や寝具などの保護材として人気があります。架橋ポリエチレンフォーム(PEライトフォーム)は独立気泡構造により、断熱性・防水性・クッション性に優れており、高機能を求められる分野で活用されています。
一方で、発泡緩衝材にはいくつかのデメリットも存在します。たとえば、種類によってはリサイクルが難しいものがあり、環境負荷の面で課題があります。発泡スチロールのようにかさばりやすいものや、紫外線による劣化に弱い素材もあるため、使用環境に応じた選定が重要です。
クラフト紙などの詰め紙
「クラフト紙などの詰め紙」は、クラフト紙をはじめとする比較的厚手の紙を使用して、梱包時の隙間を埋めたり、製品同士の接触を防いだりするための緩衝材です。シンプルな素材ながら、環境に優しく、扱いやすい点が大きな特長で、幅広い現場で活用されています。
主な役割としては、まず「隙間埋め」が挙げられます。箱の中で製品が動かないよう、空いたスペースに紙を詰めて固定することで、輸送中の荷崩れや製品同士の衝突を防ぎます。また、紙を丸めたりクシャクシャにしたりすることで一定のクッション性を持たせることができ、軽量な製品や比較的衝撃の少ない輸送条件下において、十分な緩衝効果を発揮します。
製品の表面を紙で覆うことにより、擦り傷や汚れを防ぐ表面保護としても有効です。素材として使われるクラフト紙は、再生紙を原料としている場合も多く、使用後もリサイクルしやすいという、環境への配慮に優れている点も注目すべきポイントです。加えて、他の緩衝材と比べてコストを抑えやすく、必要に応じて手で丸めたり裂いたりできるため、さまざまな形状や大きさの製品にも柔軟に対応できます。
一方で、注意点もあります。発泡素材などと比べて衝撃吸収性がやや劣るため、重量物や精密機器の保護には適していません。湿気に弱い性質があるため、使用環境によっては性能が落ちることもあります。見た目の高級感という点でも、用途によっては他の緩衝材に劣る場合があります。
特別な性能が求められないシンプルな梱包において、経済的かつ環境に配慮した選択肢となります。
ポリエチレンシート
「ポリエチレンシート」は、ポリエチレン樹脂を薄いフィルム状に成形したシート状の梱包材です。厚み、密度、加工方法などによって様々な特性を持ち、幅広い用途で緩衝材として利用されています。
その主な特徴として、薄く柔軟な特性により製品表面を擦り傷やホコリから守る表面保護機能があります。また、ポリエチレンは本来水をはじく性質を持ち、湿気を通しにくいため防水性・防湿性にも優れています。
加えて、非常に柔軟で容易にカットできるため様々な形状の製品に合わせて使用できる加工性と、薄いフィルム状であるため梱包物の重量をほとんど増やさない軽量性も特徴です。ある程度の耐薬品性を持ち、静電気に弱い製品向けには静電気防止加工が施されたタイプも存在します。
最も一般的な平シートは、製品を直接包んだり箱の内側に敷いたりする用途で使用されます。発泡させたPEフォームシートは、適度な厚みとクッション性があり、軽量物の緩衝材やデリケートな製品の保護に適しています。また、静電気の発生を抑える加工が施された静電防止シートは電子部品や精密機器の梱包に、伸縮性のあるストレッチフィルムはパレットに積まれた荷物の固定や製品保護に用いられます。
一方で、他の緩衝材と比較すると衝撃吸収性は低く、厚みが薄いため強い衝撃からは保護できない点や、単体での隙間埋めには不向きであるといったデメリットがあります。
これらの特性から、ポリエチレンシートは主に製品の表面保護を目的として使用される緩衝材であり、効果的な梱包のためには他の緩衝材と組み合わせることが一般的です。
ペーパークッション
ペーパークッションは、紙を細長く裁断した形状の緩衝材で、ダンボール箱の中で製品を保護するために使われる身近な資材です。特に「スパゲッティ状」「シュレッダー状」と呼ばれるタイプは、紙が帯状や細切り状に加工されており、製品の周囲に詰めることで隙間を埋め、移動を防止します。このタイプの緩衝材は、見た目にも柔らかく、製品全体をやさしく包み込むように保護できるため、割れやすい陶器やガラス製品、または傷が付きやすい金属や木製のアイテムの包装にも適しています。
紙素材であることから、非常に軽量でありながら取り扱いやすく、作業効率も高いため、梱包現場では重宝されています。また、緩衝材としての機能だけでなく、見た目の印象にも気を配る必要のあるギフト包装などでも多く採用されており、カラー紙を用いたバリエーションや装飾効果も人気の理由のひとつです。
さらに、ペーパークッションは環境負荷の低減にも貢献しています。主に古紙や再生紙を原料としており、プラスチック素材の緩衝材と比べて環境にやさしい選択肢として注目されています。
ただし、紙素材であるため水濡れには弱く、湿気の多い環境や長期輸送では使用に注意が必要です。また、他の緩衝材と比べて衝撃吸収力はそれほど高くないため、精密機器などの保護には別の素材と組み合わせて使用することが推奨されます。
緩衝材の代わりになるもの

緩衝材の代わりに使えるものとしては以下のようなものがあります。
・新聞紙やチラシ
読み終えた新聞や不要なチラシを丸めて使うことで、隙間埋めや軽度な衝撃の吸収に活用できます。コスト削減と廃材活用の両立が可能です。
・裁断した紙類
不要な書類やコピー用紙を細かく裁断した紙くずは、製品の固定や隙間埋めに効果的です。オフィス内の紙資源を再利用できるのも利点です。
・布類
布類は、柔らかくて扱いやすく、製品の表面保護や擦れ防止に適しています。洗って再利用できる点も強みです。
・スポンジ
梱包資材の再利用としてスポンジを活用すれば、衝撃をしっかり吸収でき、繊細な製品の保護にも役立ちます。形状に合わせたカットも容易です。
・段ボールの端・厚紙
不要となった段ボールの端や厚紙を仕切りや保護板として再利用することで、コスト削減と廃棄物の有効活用を両立できます。
・ラップ
ストレッチフィルムやラップは、製品の固定やホコリの付着防止に便利です。密着性が高く、小さな部品の梱包に適しています。
荷物を梱包する際のコツ
最後にちょっとしたコツを見ていきましょう。
荷物に合ったダンボールを用意する
荷物のサイズや重さに合わせて適切なサイズのダンボールを選ぶことで、梱包物がしっかり収まり、運搬中に荷物が崩れ、破損するリスクを低減することができます。
荷物に余裕を持たせすぎると中で動いてしまい、逆に詰めすぎるとダンボールが破損する可能性もあるため、適度な余裕を持たせつつ、しっかりと荷物を固定できるように慎重に梱包することが重要です。
重いものから入れる
荷物を箱に詰める際、最初に重いものを入れることで、荷物の重心が下に維持され、安定した状態が保たれます。一番下に重い荷物を配置することで、箱の底部がしっかり支えられ、底抜けや破損を防ぐことができます。また、重いものを最初に詰めることで、荷物が揺れたり傾いたりするのを防げます。
重いものから入れることは、梱包作業の基本であり、荷物をしっかりまとめるための重要なポイントです。
荷物に適した緩衝材を使う
荷物を梱包する際は、荷物の種類や形状に合った緩衝材を選ぶことが重要です。「緩衝材の種類」を参考に適切な梱包材を使用することで、衝撃を効果的に吸収し、製品が移動中に損傷するリスクを減らすことができます。
まとめ
緩衝材には、発泡スチロールやエアクッション、ペーパークッション、ポリエチレンシートなど様々な種類があり、それぞれに特徴があります。環境に配慮した代替品として新聞紙や段ボールの切れ端なども活用できますが、高価な精密機器の保護には専用の緩衝材が不可欠です。
しかし、どれだけ緩衝材を適切に選んでも、実際の輸送中にどの程度の衝撃が発生しているかを把握することが最適な梱包設計には欠かせません。
この課題を解決するのが衝撃データロガーです。特に藤田電機製作所の衝撃データロガーは、輸送中の衝撃を時系列で正確に記録し、その強度や頻度を数値化することができます。
これにより、実際の輸送環境に基づいた適切な緩衝材の選定や梱包方法の改善が可能になり、製品破損のリスクを大幅に低減できます。データに基づく梱包設計を行うことで、過剰包装を避けコスト削減と環境負荷低減も実現できるため、物流の効率化と製品保護の両面で優れた成果をもたらします。
より確かな製品保護とコスト最適化のために、衝撃データロガーの導入をご検討ください。